死んでしまおうと思った。何度も駅のホームでこのまま死んでしまいたいと気持ちに陥った。そして何度か死んでしまおうと家を出て踏み切りの前で立ってた。踏み切りの前で特急が来るのを待ってた。全て記憶を消してしまおうと思った。
でもいつも死のうとすると決まって突然頭の中で錯覚を起こす。もし今日寝て明日目が覚めたら、誰かが僕を迎えに来て、優しく抱きしめて、暖かく僕の全部を受け止めて幸せになれるのかもしれないと夢を見た。あとすこしだけ頑張れば楽になると思った。あとすこしだけ生きなきゃと思った。

 

でもその夢が頭から消えたとき、悲しくて涙が止まらなくなって踏み切りの前で座り込んで泣いた。死ねなかった自分が悔しくて許せなかった。記憶も全て、消えてしまいたいのに簡単に消せない。生きてることに後悔しかなくて自分に生きてる意味がないと思った。全て夢だと思いたかった。現実だと思いたくなかった。悲しくて悲しくて苦しくて寂しくてどうしようもできなかった。あとちょっと、あとちょっとだから頑張ろうと自分を慰めて来たのに、あとちょっとなんてなかった。自分にずっと嘘をついてきた。ごめんね自分、と思ってとても悲しくなった。

 

小学校の先生も中学の先生も高校の先生も、病院の先生もカウンセラーの先生も児相の職員さんも、みんないなくなった。
あの日、ずっと3年間誰にも言えなかった気持ちを手紙に書いて児相に行った。緊張してなにも言えないと思ったから、必死に文章にまとめた。まとめながらフラッシュバックして泣いてしまったけど、ここで負けてはいけないと最後まで書きあげた。


それを児相の人に見せるのはかなりの勇気が必要で相当迷った。3年間我慢してきたことを簡単に知らない他人に言う勇気が自分にない気がした。それと同時に親を悪く言って自分は悪いことをしているのではとも思った。あまりにも誰にも相談できなくて何個もの病院へ行っても言えなかったから、自分のしてることが正しいのか間違ってるのか全くわからなかった。でもとにかくほんとに苦しかったので、なにか間違ってるのではないかと思い始めて誰かの助けが欲しくて児相に行った。雨の中もうお家には帰らないと決意して、楽しく過ごせることの期待だけを持って頑張ろうと勇気を出して行った。

 

だけど自分が想像していたことと正反対のことしか言われなかった。大人たちが信じれなくなった。「高校生になるんだからひとりでも頑張りなさい。なにかあったら警察に行けば対処してもらえるから。ひとりでここまで来れたんだし大丈夫だから。」と職員さんに言われた。そして「小さい子なら直ぐに助けてあげるけど、あなたよりも小さい子のほうが優先だし、もう高校生になるんだからもっと強くならないと。」と付け加えられた。

 

そのとき絶望した。ほんとに家に帰りたくないんです!!お願いだから親から離してください!!と言うこともできなかった。大きい荷物が無駄になったとだけ思い、そのまま暗くなった外に出た。雨が降ってた。外に出た途端、動けなくなってなにかが吹っ切れて泣いた。とても寒かった。誰も抱きしめてくれなかった。ほんとにさみしかった。

 

悔しくて悔しくてなにも頑張れなかった。本当の気持ちで肯定されたことがなくて、自分のしてることに正しいのか間違ってるのか全くわからなくなって泣くことしかできなかった。全て記憶を消してしまいたかった。消したい過去がなにひとつ消せなくて苦しかった。消えなくてもいいから誰かに認められたかった。自分が間違ってたとしても、どこか頑張ったところはあるんじゃないかと思いたかった。誰かに抱きしめられたら頑張れそうな気がした。僕は頑張りたかった。普通に笑って楽しく過ごしたかった。当たり前がわからなかった。暴力はだめなの?暴力はなんで正当化されないの?と思った。

 

本当にそれが間違っていたのなら児相の職員さんでなくても、他の場所で大人たちは反応してくれたのではないか。そう考えたら今まで自分はなにも頑張れていなかったんだと思うしか他なかった。親は間違っていなかったんだと思うしかなかった。だから自分が自分を受け止めて生きていかなきゃと思った。

 

そう思ったら、もう頑張っていける自信がすこしもなかった。僕は誰かにあまえたくて弱かった。早く死んでしまいたい。